七姫物語

七姫物語 (電撃文庫)
ああ、これは大作だ。
小さな都市国家が居並ぶ大陸の片隅。嘘つきのトエと力持ちのテンがタッグを組んで天下を目指す。孤児院で拾われた少女カラスミは、7番目の都市国家を象徴する姫――七姫――に仕立て上げられる。あるときは巫女として儀式をこなし、あるときは敵の謀略に巻き込まれながら、群雄割拠の世を眺める少女の成長を描く。
ジュブナイルの皮をかぶった政治ものという意味では 星界シリーズ と同じ。私は意外と政治ものが好きなのかもしれない。こちらの主人公たちは星界と違って(文字通り)地に足がついているので、ウキウキするというより落ち着いた気持ちで読んでいられる。
戦国ものでありながら緊迫した場面がなく、カラスミ姫の視点でまったりと進む物語も心地よい。移りゆく季節の匂いを感じさせる情景描写力は、漫画である ARIAヨコハマ買い出し紀行 に比肩する。やはりフィクションには臨場感があってほしい。けど「臨場感=アクションシーン」はもう飽きた。これからは「臨場感=空気感」が綺麗に描かれている作品を探していきたい。