進歩主義は非実在青少年の夢を見るか (2)

つづき。
ここで「国賦人権説 ←→ 天賦人権説」に似た対立軸として「保守主義 ←→ 進歩主義」という概念を持ち出してみるテスト。
保守主義進歩主義の違いの根源は時間観にある、とどこかで読んだ記憶がある*1。いわく、

  • 保守主義の時間観は「循環」。Unicode で書くと「↻」。先祖代々受け継いできた土地を守り、子孫に伝えていくことが人間社会の目的。祖父の代も孫の代も根本的には変わらない生活をしている。
  • 進歩主義の時間観は「発展」。Unicode で書くと「↗」。先人の偉業の上に新たな発明を積み重ね、より良い生活を求め続けることが人間社会の意義。祖父の代と孫の代では生活はがらっと変わる。

前者は島・農耕系、後者は大陸・狩猟系の伝統だろうが、近代国家はみな大陸・農耕系であり*2、どちらかといえば進歩主義の時間観の方が現状にマッチしている。
では、進歩主義は未来永劫続くのか? 私の答えは NO だ。進歩主義は持続可能ではない。ふたつの理由がある。

  • ひとつは、人類が地球上でしか生きられないこと。進歩主義を推し進めていくと、最終的には地球全体がひとつの村社会になる。宇宙船地球号を持続可能とするために、全員が自覚を持って生きる社会。それはスケールがでかいだけの保守主義そのものじゃまいか? つまり、地球という有限のリソースに拘束されていることによって、突き詰めれば進歩主義保守主義は平衡点に達するだろう。
  • もうひとつは、人類が有性生殖方式の生命体であること。進歩主義が進めば進むほど教育に長い時間がかかり、「大人になる」前に生殖可能年齢を過ぎてしまう。そうなると進歩主義者だけでは人口を維持できなくなる。現に先進国では少子化という形でこの問題が表出している。種の保存という生命体の究極目的に照らせば、進歩主義はむしろ不利である。進歩主義を突き詰めすぎれば人類は自滅するだろう。

つづく。

*1:出典が思い出せない…誰かの話を聞いただけかもしれない

*2:交通遮断的な意味で島は消えたし、食糧調達的な意味で狩猟は消えた